規格・技術資料
(鋼球)

バーチャル工場見学鋼球の製造工程

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鋼球の製造⼯程PDF

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1.材料

佐藤鉄工では、素材の鉄の製造から吟味し、製鋼メーカーと共同開発した成分で精製された鉄線(ワイヤーロッド)を使用して鋼球やパチンコ玉を作っているんじゃ。 製鋼メーカーで鉄線を作るとき、炉で赤くなるまで焼いて伸ばして鉄線にするのじゃが、そのとき表面にスケール(酸化皮膜)が付いてしまうのじゃ。

ワイヤーロッド(約2ton)
  • 鉄って一つじゃないんですか?
  • そうなんじゃ。鉄といっても色々な成分が配合されて作られていて、目的に応じて使い分けされているのじゃ。
  • じゃ、鉄はみんな製鋼メーカーに特別な成分で鉄を作ってもらっているんですか?
  • 製鋼メーカーに特別な成分で鉄を作ってもらうには大量に発注しないとだめなんじゃ。

2.伸線

製鋼メーカーで製造された鉄線(ワイヤーロッド)そのままでは圧造できないので圧造しやすいように所定のサイズの線径に加工するのじゃ。 初めに鉄線のスケールを取り(酸洗い)、潤滑剤をコーティングし、伸線ダイスで均一な金属組織で、精密なサイズの線径に加工(伸線)しながらキャリアにグルグル巻き取るのじゃ。

写真(左)伸線された
線材(約1ton)
  • 初めて知りました。博士、1tonの線ってどのぐらいの長さなんですか?
  • うむ、いい質問じゃ。線の直径によって違うが、写真はパチンコ玉用の線材なんじゃが、直線にすると約3kmにもなるんじゃ。パチンコ玉はどこのパチンコ店でもすべて11mmに決まっているのじゃが、ベアリングなどの鋼球は色々なサイズが必要とされるので、製造する鋼球の直径の約2/3程度の線径の線材が必要なんじゃ。
  • ふ~ん...

3.圧造

伸線加工され、グルグル巻きにされた鉄製ワイヤーを原材料として、ボールヘッダーで精密に切断(ピース)すると同時に金型で圧縮プレスし、一気に球状の圧造ブランク球にするのじゃ。佐藤鉄工では、圧造ブランク球の金属組織が均一になるように金型が設計されているのじゃ。パチンコ玉の場合1トンの材料からおよそ17万個のパチンコ玉が作られているのじゃ

  • 両側から押しつぶしてボールにしちゃうんだ、すごいなぁ
  • そうなんじゃ、鉄を無理矢理おしつぶしてしまうのじゃから、ものすごい熱がでて 手に持てないくらいに熱くなってしまうんじゃ。ちなみに高速ボールヘッダーでは1秒間に約8個の鉄球を製造することができるのじゃ
  • ふ~ん、そうなんだぁ、すごいなぁ...

4.荒研磨(フラッシング)

プレスされた圧造ブランク球のバリ(余分な突起物)をフラッシングマシンで削り取るのじゃ。荒研削(フラッシング)とは、2枚の溝の付いた回転する金属プレートの中を圧造ブランク球を転がし、バリを削り取っていくのじゃ。この荒研削だけでも、荒・中・仕上げの3つの工程があり、完成品よりもまだ一回り大きいサイズで仕上げるのじゃ

  • 博士!すっごい音ですね!カミナリが鳴ってるみたい・・!転がるだけで球になるんですか?(大声)
  • うむ、いい質問じゃ。溝といっても製造する鋼球のサイズに合った溝が必要なんじゃよ。 ただ転がっているだけではないのじゃ。金属プレートにすごい圧力で押さえられて石臼のようなイメージで、無駄な部分をバリバリ取り除いていく!からカミナリのような加工音なんじゃ。(大声)

5.刻印(パチンコ玉専用の工程)

荒研磨された鉄球をお客様指定のマークが彫刻された金型がセットされている自動連続刻印機(パチンコボール刻印専用機)でマークを刻印するのじゃ。金型には鉄球のRに合った溝にマークが加工してあり、スライドする金型の間を自動的に鋼球が転がり、鋼球の赤道上に均一な深さのマークが連続して転造刻印されるのじゃ。

  • 博士、絵とかも刻印できるんですか?
  • そうじゃ、ロゴマークとかを刻印する場合が多いんじゃ。文字であれば大きさにもよるが最大で10文字まで刻印することも可能じゃぞ。
  • ふ~ん、じゃ~パチンコ玉に僕の名前も刻印できるの?
  • その通りじゃ !最近、新しいバーコードのような刻印も開発さているんじゃ。

6.熱処理(浸炭焼入れ)

浸炭→焼き入れ→焼きもどし(調質)を行った鋼球(パチンコ玉)の表面層は非常に硬く、 内部のC(炭素)%は低くしなやかで強靱な組織であるため、耐久性、反発性が向上します。※ 浸炭焼入れは低炭素鋼球の熱処理行程です。

浸炭
荒研磨された鋼球を回転レトルト炉に練炭と一緒に投入し、密閉して炉内を飽和炭素雰囲気の状態で温度を約900度まで加熱し、長時間かけて鋼球の表面から約1㎜程度のC(炭素)%を高めるように浸炭を施します。> もっと詳しく見る
焼入れ
炉内温度を密封状態で焼き入れ可能な温度(約800度)まで下げて、炉内から一気に水槽に鋼球を投入し、急冷して表面の炭素を固定させます。このとき出来た表面の炭素合金が非常に硬い金属です。
焼き戻し(調質)
浸炭、焼きいれされた鋼球を再度、連続テンパ炉に入れ低温(約200度前後)で1時間程度熱処理を行い、徐冷(焼き戻し)し内部の金属組織と硬度を安定させます。
  • つまりじゃな、簡単に言うなら、焼きいれと浸炭と言う行程は非常に重要なところなんじゃ。たとえば、刀なども浸炭焼入れしてつくるのじゃが、この行程の良し悪しが、名刀になるかどうかに大きくかかわってくるのじゃ。どうだ、これならわかるかのう?
  • うん、わかった。とっても大事なところなんですね、浸炭って。博士の頭もいっぱい浸炭したんですね。
  • うむ、確かに浸炭は時間をかければかけるほど奥まで深くなるのじゃが、長くやればいいというものでもないのじゃ。ベアリング鋼球の場合は基本的には直径の1/3程度の深さが良いと言われているんじゃ。
  • そっか、すごいんですね! パチンコの玉を造るのにそんなことまで考えてつくっているなんて知らなかったなぁ

更に詳しい説明は「熱処理の豆知識」ページにもあります。

7.タンブラー

熱処理後の鋼球を加工機に投入し、ドラムとインペラを回転させて鋼球表面のスケール(酸化皮膜)を除去します。この加工中に鋼球と鋼球をぶつかり合せることで、鋼球の表面組織を圧縮し、硬度や耐久性をより高めます。

  • 熱処理後の鋼球は真っ黒な表面で品質などのチェックが出来ないし、表面のスケール(酸化皮膜)は非常に硬く、次の精研磨工程の補助研磨的な役目も果たしているのじゃ。
  • わかりました。

8.精研磨

刻印や熱処理で歪んだ鋼球やパチンコ玉を精密鋼球研磨機で所定の寸法まで精密に研磨で仕上げます。精密鋼球研磨とは溝の付いた金属プレートと砥石で仕上げていくことなのじゃ。 砥石も荒いものから細かいものに変えていくのじゃが、ベアリング用鋼球の場合は少なくても荒、中、仕上げの3つの研磨工程が必要なのじゃ。ベアリング鋼球の超精密級になるとラッピング工程も必要なんじゃよ。

  • 精密ベアリングに使われる鋼球は寸法精度が良くても 材料の組織や表面粗さが悪いと高速回転で音がするのじゃ。 音響に問題ないように精度よく、鏡面に磨きあげるのじゃよ。
  • 音響に問題?それってどんな所に使われる鋼球ですか?
  • 以前はカセットテープの回転部分じゃが、今ではCDやDVDなどの 回転部分などは大きな音がするといけないのじゃ!
  • そうですね。ほんとうに鋼球って色々な所に使われていますね。

9.ポリッシュ

精研磨された鋼球の極表面を鏡面になるままで時間をかけてバレル方式で磨きあげます。パチンコ玉の場合メッキ処理を行うので、鋼球表面を超精密級レベルの鏡面に仕上げしないとメッキ処理をしても美しいパチンコ玉に仕上がりません。洗浄後、錆び止め処理をします。

  • 博士こんなに磨かないといけないんですか?
  • そうなんじゃ、表面が美しくないとメッキをしても美しい光沢がでないのじゃ。
  • 女の人がするお化粧と同じですね
  • うむ・・・。そんなところじゃ

10.メッキ(パチンコ玉専用の工程)

鋼球の表面光沢と防錆性、耐摩耗性を高めるためにパチンコ玉専用メッキ設備で硬質クロムメッキを施します。クロムメッキ浴の中に螺旋誘導溝のついた回転ドラム(カソード)と固定電極(アノード)があり、その電極間に鋼球を転がしながら連続でメッキ処理をしているので、鋼球表面に均一で光沢のある硬質クロムメッキ加工を施すことが出来ます。 精研磨された鋼球の極表面を鏡面になるままで時間をかけてバレル方式で磨きあげます。パチンコ玉の場合メッキ処理を行うので、鋼球表面を超精密級レベルの鏡面に仕上げしないとメッキ処理をしても美しいパチンコ玉に仕上がりません。洗浄後、錆び止め処理をします。

  • パチンコ玉専用メッキ設備って?
  • ちょっと難しくなるが良く聞いてくれるかの。硬質クロムメッキ処理をするのには、大量の電気が必要なのじゃ。 ふつうは、品物のメッキが必要で無い部分を掴んでメッキ処理をするんじゃが、そうすると掴んでいる部分には当然メッキが付かないんじゃな。
  • あ、そっか、球体はそれじゃまずいですね
  • うむ、鋼球は表面すべてにメッキが必要じゃから電極の間に鋼球を転がしながら メッキを付ける必要があるのじゃ。 その為に大量の電気を通す為に電極と鋼球の間隔は狭くしなければならないんじゃ。 ただ、両方の電極に鋼球が触れるとスパークして不良になるから気をつけないといかんのじゃ!
  • そっか、本当に大変なんですね、パチンコ玉1個つくるのにもすごい手間がかかってるんだなぁ

11.色付(パチンコ玉専用の工程)

刻印されたパチンコ玉全体に特殊ペンキで着色します。全体にペンキで着色されたパチンコ玉を再度バレル研磨します。パチンコ鋼球の表面が磨かれ、パチンコ玉表面のペンキが取れ、刻印された凹んだマークの部分だけペンキが残り、刻印されたマークを引き立たせます。また刻印部分の錆止め保護も兼ねています。

色付けしたパチンコ玉 完成したパチンコ玉
  • 色々な色で色付けするんですか?
  • 良い質問じゃ!
    99%は白色なんじゃ。白色で色付けされたパチンコ玉が、ホールの蛍光灯の下で一番きれいに見えるのじゃ。それにパチンコ台の盤面はカラフルな色のデザインが多いじゃろ、弾かれた白く輝くパチンコ玉が盤面で良く見えるからなのじゃ。

12.検査・梱包

佐藤鉄工で製作された鋼球やパチンコ玉は、全数目視により表面検査され、抜き取りでサイズ検査を行い、検査に合格した商品だけ梱包され出荷され、お客様の所に届けられます。

  • これで終わりじゃ。どうじゃ、むずかしかったか?
  • うん、ちょっと。でも、よくわかりました、博士。どうもありがとうございました。
  • うむ、また質問があったら来るんじゃぞ!